大学職業指導研究会

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2022.09.27【開催報告】「第二・第三分科会創立40周年記念式典」人生100年時代をどう生きる

 

9月2日、東京都市大学世田谷キャンパス新7号館TCUホールにて、
大学職業指導研究会第二・第三分科会創立40周年記念式典が開催された。

記念式典には大学職業指導研究会に加盟する大学の教職員や学生が対面、オンラインを通して多数参加し、
株式会社東洋経済新報社、佐藤朋保氏による「LIFE SHIFT~人生100年時代の行動戦略~」と題する
記念講演会が行われた。

講演後には佐藤氏と学生の座談会や教職員の情報交換会が行われ、
和気あいあいとした雰囲気のなか、参加者はライフシフトについて考えを深めた。
特に、佐藤氏と学生の座談会では、学生から多くの質問が寄せられた。

人生100年時代を迎えるなか、将来に対する不安や迷いを抱えながら
これからの長い人生を生きる学生たちにとって、佐藤氏との座談会は実り多き時間となった。

開催にあたり、本式典を主催した東京都市大学キャリア支援センター北村慶太郎氏に
お話を伺ったところ、次のようにその意義を語られた。

「人生100年時代、高齢化が進む中で今までの3(スリー)ステージの人生設計では立ち行かなくなる。
 マルチステージの人生へとシフトしていくなかで、価値観の変化が生まれるだろう。
 ベストセラーとなった『LIFE SHIFT』だが、そのインパクトは社会人以上の読者に限られ、
 若い世代にはライフシフトの概念がいまだ浸透していないように見受けられる。
 今回の式典を通してライフシフトの概念を若い世代に広め、今後の生き方について問いかけていきたい」

記念講演会では、佐藤氏が『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』と
『LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略』の2冊の書籍を基に、次のような展望を紹介した。

「医療技術などのテクノロジーの進歩により、人が100年生きる新たな時代を迎え、
 3ステージの画一的な人生から、マルチステージの多様な人生へと考え方を変えていく必要がある」

「3ステージの人生は、20代まで教育、60代まで仕事、その後引退という3段階に明確に分かれていた。
 3ステージの人生のままでは

  ・20代までに学んだ知識で、その後60年勝負できるのか
  ・老後の資金は足りるのか
  ・引退後の35年、何をして過ごすのか

 という3つの疑問から逃れられない」

「働く、学ぶ、探索するといったステージが短い期間で入り乱れるマルチステージの人生であれば、
 各ステージをバランスよくこなすことで、人生100年時代に順応していくことができうる」

また、佐藤氏は、マルチステージの人生を実行していくにあたって、次の3つの要素が大切だと伝えた。

 1.「自分ならできる」という自己肯定感
 2.「自ら取り組む」という自己主体感
 3.「ありうる自己像」を考える

ありうる自己像を考えることで、今の自分はどの位置にいるかを見極められる。
ありうる自己像に向かって、どんな行動を取るかを選択することで、未来を変える(つくる)ことができる。
人生の未来は決して事前に決まったものではない。

その際、自分に対してある程度の自信を持ち、未知のことにも自ら向き合うという気持ちがあれば、
より様々な考えと可能性を得ることができるだろう。

最後に佐藤氏は、「人生戦略にたった1つの正しい答えはない」と語った。
大事なのは、「80歳、あるいは100歳になった自分が、今の自分をどう思うかを意識すること。
生き方が多様化した時代には、画一的な成功基準はきっとなくなる。
だから自分に正直に『自分の正解』に向かっていくことこそ人生100年時代を生き抜く上でとても大切だ」と
自分の興味関心を大事にすることの重要さについて指摘した。

講演後、佐藤氏と学生の座談会が行われた。
講演を聴講し、新たな価値観や考え方を知った学生たちは、これから自分たちはどう生きたら良いのか、
こんなときはどうするべきなのかといった、より良い行動戦略に向けての質問をたくさん投げかけた。

なかにはライフシフトについてだけでなく、人生の先輩に対しての質問もあり、
それらの学生の質問に対して一つひとつ真摯に向き合い返答する佐藤氏の姿があった。
佐藤氏の返答のなかに、「先のことは誰にもわからない」という言葉が多く出てきた。
「わからないからこそ、自分がどういう生き方をしたいのか、またパートナー(家族)が
どういう生き方をしたいと思っているのかをきちんと知り、話し合うことがリスクヘッジになる」と述べ、
人生の選択肢と可能性を狭めないように将来を見据え、戦略的に行動することの大切さを語った。

また佐藤氏は、「(3ステージの価値観でこれまで生きてきた自分には)
マルチステージへの移行について、恐怖はある」とも発言した。

「これからはマルチステージだからと言われて、自分も簡単に今の仕事を辞められるわけではないし、
3ステージとは決別した生き方を現時点ですべての子どもたちに勧められるわけでもない」と苦笑いしながら
話す佐藤氏を見つめながら、頷く学生の姿が多く見受けられた。

このように座談会は、自身の将来について深く考え、
次々と質問を繰り出す学生と佐藤氏との真剣ながらも和やかな時間となった。

座談会後、今回の式典に参加した学生にインタビューを行った。

東京都市大学、知能情報工学科3年の学生は、

「人生100年という長いスパンで考えることを意識したことがなかったため、新たな気づきがあった。
 自分自身をロールモデルにするという考え方を得て、自信をもつことができた。
 佐藤氏との座談会では、質問する時、自分の説明が足りないところも汲み取り補ってくれた。
 答えづらいようなことにも枝葉をつけて詳しく答えてくださり、優しさを感じた。
 これからの人生でいろんな選択肢があるため、今回学んだことを活かしていきたい」

と語り、将来に対して前向きな姿勢を見せた。

学生と佐藤氏の座談会の裏では、大学職員同士の情報交換会が行われた。
コロナ禍で対面での活動が減少しているなか、他大との交流は職員にとっても貴重な場となった。
情報交換会の中で、職員の方にも本講演会の感想を伺った。

多くの方から寄せられたのは、
「“就職がゴール”という現在の考え方そのものから改めなければいけない」との意見だった。
また、“学生支援の重要性をより強く感じ、学生から聴くだけではなく、
学生に話すことの内容を得ることができた”と
普段からキャリア支援を行なっている方の立場における意見も多かった。
さらには、職員自らの今後の人生についても考えるきっかけとなったようだ。

今回の式典を通し、人生100年時代を生きる上で大切な行動戦略、ライフシフトの概念について、
幅広い世代間で新たな価値観を共有することができた。
3ステージからマルチステージへ移行するなかで、
ありうる自己像を実現させるための行動戦略を知る、有意義な時間となった。
またライフシフトの概念は、今回参加した学生に新たな気づきを与えた。

人生100年時代を生きる上で、自分の将来を見据えて戦略的に生きること、
ありうる自己像を考え、自らをロールモデルにして行動することの大切さを知ることができた。
また、自分の人生について、狭い視野ではなく、広い視野で考えていくことが重要だと感じた。

就職活動が控えるなかで、今までは就職という人生の節目となる部分にだけ注目して、
そこがゴールになってしまっていた。
しかし、就職してからこそがスタートで、そこから自分がどうありたいかを考えて行動することが
大切だと気がつくことができた。

将来に対して漠然とした不安を抱えることもあるが、そのようなときに心の拠り所になるのはありうる自己像だ。
自分をロールモデルにすることで常識に囚われない、自分にとっての正解を見つけることができると考える。

自分の納得する人生を生きられるかどうかは自分の選択と行動次第だ。
そのためありうる自己像を思い描いたうえで、そこにたどり着くまでの道のりを見据え、戦略的に行動していきたい。

                                          【東京都市大学新聞会】

株式会社東洋経済新報社 佐藤朋保氏

講演会の様子

座談会の様子

座談会参加学生

情報交換会の様子